暇つぶしの読み物


夜の長距離列車

1/6ページ目

 お金が必要だった。

 一緒に棲んで、まだ3ヵ月の年下の彼に、捨てられたくなかった。
 離婚してからずっと一人で子供を抱えて生きてきた。
 心底、疲れきっていた時に知り合ったのが、彼だった。
 金使いが荒く我儘で自分勝手、キレ易くすぐ暴力を奮う、世間からみればどうしようもない男かも知れない。そんな男でも、私にとっては必要な人だった。
 彼にしがみついていることだけが私にとっての安堵だった。
 誰かに寄り添っていたかった。しがみついて生きていたかった。
 私はいつしかそんな女になってしまっていた。
 まるで親に見離された子供の様に、ただ愛に飢えていただけなのかも知れない。
 けれど、今の私には彼しか、しがみつく相手がいなかったのだ。
 だが、仕事をまともにしない彼との生活は、もう限界にきていた。

 待ち合わせした男は、喫茶店を出ると、私の肩を抱き、まっすぐホテルの中に入った。

 部屋に入るとすぐに私は抱きすくめられた。
 唇を重ねてくる…ミントの香りがした。

「本当に来てくれるとは思わなかったよ。」

と、男が言った。
 笑うと顔中がシワシワになり、40は過ぎてる様に見えた。優しい眼をしてた。

「かわいいよね。君、結婚してるんだっけ?」

「いえ、バツイチなんです。」

「…そっか」

 男はキスを続けながら、私をゆっくりとベットに倒していった。

「最近エッチはしてないの?」

 セーターを捲られ、顔が隠れて私は自分のセーターの白い世界に包まれた。

「待って、シャワーを浴びてから…」

「いいよ、このままで…」

 私は静かに目を閉じた。
[ページ指定]

次n→ 

<<重要なお知らせ>>

@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
@peps!・Chip!!は、2024年5月末をもってサービスを終了させていただきます。
詳しくは
@peps!サービス終了のお知らせ
Chip!!サービス終了のお知らせ
をご確認ください。



[ホムペ作成][新着記事]
[編集]

無料ホームページ作成は@peps!
無料ホムペ素材も超充実ァ