1/1ﾍﾟｰｼﾞ目 「…平次の…あほ…」 ぽつりと声になる帰り道。 気持ちは沈む一方。 なのに… 「なんでホワイトクリスマスやねん…」 優しく降り続ける雪 地面に落ちてはすぐに溶けてしまう… 悲しい目でそれを見つめると和葉は携帯電話を開く 着信ゼロのその画面に余計悲しくなる… 付き合い始めて初めてのクリスマス 期待などしていなかった… だけどそれでも心のどこかで期待していたのだろう… それゆえ孤独感に飲まれる… はぁ…と息は白くなって 手袋をする手はぎゅっと携帯電話を握りしめて 悲しい後ろ髪が歩く度に揺れた。 ＊＊＊＊＊＊ 「…あっ！」 平次が今いるのは大阪の中心地 賑やかな通り 事件だと言って飛び出したのは昨日… そのまま昨日は家には帰っていなかった 「今日…クリスマスなんや…」 様々なところに飾られたツリー キレイなネオンがそれを引き立てる 帰るために向かう駅前にはクリスマスケーキの販売でさらに明るくなる 横目でその光景を見ながらぼんやりと和葉のことが頭に浮かぶ… そして、 平次はふと携帯電話を取り出す 昨日から開いたことのない携帯… そっとその携帯を開く 「５０件！？はあ！？」 多少は予想していた和葉からの着信… 履歴には全て和葉の文字。 半分は本気で心配しての呼び出し… もう半分はほとんど嫌がらせの着信… 「…なに考えとんねん…アイツ…」 平次もそのことは解っている 困った顔して和葉の番号を表示する そしてしばらく考える… どう言い訳するか… そんなことを考えている間に１通のメールが受信された 電話の着信はあってもメールの着信はなかった… 平次は画面を受信フォルダに変える 『会いたい』 それだけ書かれたメール それだけで平次の心を動かす すぐに発信ボタンを押す… 「和葉？」 すぐに繋がった相手の名前を呼ぶ しかし返ってきたのは、 『こん…ドアホ！！！！！！』 「うっ…」 キーンと頭に響く声… 『…何しとったんよ…』 その次の瞬間には力のない小さな声… 「…事件…やってん…すまん…」 『ぇ…』 「…えっ…なんや？」 お互いに戸惑った… 『平次が素直に謝ったから…』 「なっ…謝ったら悪いんかい！」 『悪ないけど…』 「…なんやねん…」 どうも調子の出ない会話 平次は帰りの電車を待つホーム 和葉はもうすぐ自宅が見えるいつもの道 『メール見た？』 先ほどのメール。 「ああ。見た。」 確かに確認した。 『今日こっち帰ってくるん？』 「…帰って来て欲しいん？」 『…いじわる…』 「和葉が帰って来て欲しい言うたら帰るで？」 未だ電車の来ない静かなホーム それから静かに降る粉雪の中の帰り道 電話には沈黙が流れる そして、小さな声が伝わってくる… 『…帰って来て…平次…アタシ１人やとこの雪冷たすぎる…』 ドクッと血液が流れ出すような感覚… 平次も小さな声で言う… 「…雪…降っとるんか？」 『ぅん…粉雪やけどね…』 空を見上げる和葉は立ち止まる 「そぉか…ホワイトクリスマスやん…」 『あは…平次に似合わへんわその言葉…』 笑っているのか泣いているのか… そんな声が出てしまう 「うっさいわ…」 『…』 「和葉？」 黙ってしまった和葉に思わず声をかける 『ううん…』 「泣くなや…」 すすり泣きのような音が聞こえる… 平次が申し訳無さそうに言う… 『泣いてへんもん…』 「泣いてる。」 『…寒いだけやもん…』 「…おまえ外におるんか？」 和葉の言葉に気づく… 『うん。平次が電話してきたから…』 「意味解らへんわ…早よ帰れ…」 『…平次が帰って来るまで嫌や…』 「風邪ひいても知らんぞ」 『そしたら平次のせいや』 泣きながら笑う和葉の声 「…そしたらオレがあっためたるわ…」 『…ぅん…』 電話の声に対してこくっと頷いた 『ちゃんと帰ってくるん？』 和葉の不安な声… 「あと３０分で着く。電車来たから切るで？」 ホームに電車が入ってくる 『平次…』 「駅まで迎えに来い。」 『え…？』 和葉の返事を聞く前に電話は切れる 通話時間１２分２５秒 その表示に２人はそっと携帯電話に微笑みあった。 そして、和葉は家とは逆方向の駅まで駆け出す。 もうすぐ会える存在に心弾ませて。 平次は静かな車窓の外をぼんやりと眺めながら和葉を想う。 「あ…ほんまや…雪降っとる…」 ～END～ [指定ﾍﾟｰｼﾞを開く] ＜＜重要なお知らせ＞＞@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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