土方本別館

ひじかぐや姫
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ひじかぐや姫






むかしむかしあるところに、竹取の翁と呼ばれる、島田魁という年老いた男がおりました。

ある日、島田がいつものように、その怪力で竹をなぎ倒すと、その竹がぱっくりと割れて、見目たいへん可愛らしい少年が現れたのです。

島田はびっくりしましたが、彼の吸い込まれるような瞳から目が離せなくなり、我を失ったかの勢いで、有無を言わさずその美少年を連れ帰りました。

島田は、彼を「ひじかぐや」と名づけ、それはもう大切に、大切に育てました。

ひじかぐやはすくすくと大きくなりました。

あまりにも甘やかされて育ったので、大変口が悪いのですが。



ひじかぐやは、絹のような白い肌、漆黒のつややかな髪、少々つり上がり気味の目に大きな瞳、そして吸い付きたくなるような引き締まった唇をもつ、なんとも美しい姫(?)に育ちました。

しかし、島田はひじかぐやの美しさを独り占めしたい気持ちと、彼のもつ

「この人のためなら命をも捨てよう」

と言わせてしまうような、まるで魔力のような魅力を恐れ、家の中と近くの竹やぶから外の世界には出さずに育てました。


しかし、そんなある日、ひじかぐやが竹やぶで竹を割って遊んでいると、趣味で竹の子堀に来ていた、貴族「榎本武揚」が通りかかりました。

榎本はひじかぐやのあまりの美しさに、一瞬で心を奪われ、一緒に都に来るよう言いました。

ひじかぐやは艶然と微笑むと、島田に

「俺ぁ今から大人んなって来るぜ」

とだけ言い残し、榎本と共に都に行き、住み着きました。



ひじかぐやの噂は、一瞬にして街中に知れ渡りました。

彼を一目見ようと、毎日男女問わず人が絶えません。

榎本は、あれからひじかぐやに求婚しましたが、なかなか受け入れてもらえません。

ひじかぐやは、しかし榎本の豪邸が気に入り、毎日彼の家の高級品を眺めては、うっとりとしていました。

そこに、頭の良い大鳥圭介が、「ぼ、僕と結婚してくれないか!」と申し出ました。

要は、まだ榎本と結婚していないひじかぐやは、今なら自分のものにしてしまっても罪にはならない、ということです。

それに気づいた男達が、次々と美しいひじかぐやに求愛してきました。

集まった求愛者達は、榎本、大鳥のほかに、松平太郎、伊庭八郎、ブリュネ、星恂太郎、野村利三郎、市村鉄之助らです。

何故か、その中に島田魁の姿も発見されました。



ひじかぐやは、美しく小首をかしげてしばらく考えていましたが、やがて妖艶に笑い顔を上げると

「今から俺の指定するものを用意できたら、一晩くらいいいぜ」

と、爆弾発言をしました。

そして、求愛者達に紙封筒を渡したのです。



求愛者達は、一人になると、そっと封筒を開きました。

そこには、だいぶ高級ではありますが、貴族の者達にとっては、多少の無理をすれば手に入りそうな品々が、一人一品ずつ書かれていました。

そして、その品をひじかぐやのもとに持ってくる時間と場所が示されていました。

渡されたときに、誰にも見せてはいけない、と言われていたので、きっと難題が書かれているだろうと予想した男達は、

「自分は当たりくじを引いたのだな」

と勘違いしました。



その10日後、今まで空き地だった場所には、立派な豪邸が建っていました。

実は、榎本の家だとひじかぐやにとって都合の悪いことがいろいろとあるので、ひじかぐやの榎本への封筒の中には

「豪邸」

と書かれた紙を入れておいたのです。

これで、ひじかぐやの家が出来上がりました。



ひじかぐやは

「私のためにここまでしてくれるとは…貴方の気持ち、確かに伝わりました」

とか何とか適当なことを言って、その報酬に一晩レンタル権を与えた後、次の品を所望して返します。

ひじかぐやは頭がよかったので、男達との指定の日にちを上手くずらし、求愛者同志が一緒に品を届けに来ることが決してないように、うまく細工をしていました。

入り口と出口も別です。

「貴方が一番私のことを愛してくださっている。だから私は貴方とまた会いたい」

と口から思いつく限り、皆に適当に言いました。

そして皆に

「私はある呪いによって、誰かと関係を持っていることがばれると、月の世界に攫われてしまうのです」

とでまかせを言いました。

しかし、皆ひじかぐやの魅力にくらくらなので、疑おうともしません。

求愛者達は、ひじかぐやを手に入れたのは自分だと勘違いをしては、彼に貢ぎ、報酬を受けて帰ってゆきます。

こうして、ひじかぐやは上手く皆を騙しながら、それを如何にしてばれずに続けていくかのスリルを楽しんで生活していました。

いつの間にか、ひじかぐやのまわりには高級品があふれ返っていました。



ある日、伊庭八郎が言いました。

「歳さん、いい加減おいらに決めたらどうなんだえ?」


実は、ひじかぐやは、始めに封筒を渡した日に、伊庭八郎には

「ひじかぐやの秘密を守ること」

と書いた紙を渡したのです。

面白いもの好きで、悪さ好きで、この付近で一番のぼんぼんだった伊庭なら、喜んでこの計画に参加してくれるに違いないと踏んだのです。

案の定、伊庭はすぐに餌にくいつきました。

今までひじかぐやの悪行がばれずにすんだのも、すべて伊庭の取り計らいに寄るものだったのです。

伊庭は、たった一人ひじかぐやの正体を知っていましたが、ひじかぐやの魅力にすっかりはまっていたので、それを咎めることは出来ませんでした。

ちなみに、伊庭は何故かひじかぐやのことを「歳さん」と意味不明な名で呼びました。

ひじかぐやは

「お前は…もう俺に飽きたのか?俺がこんな生活をしていれば、皆にばれずに俺たちは愛し合えるというのに…」

と悲しそうに言いました。

うつむいて、肩を震わせています。

伊庭は、何も言えませんでした。

「歳さん…ごめんよ、泣かないでおくれよ」

と、言いました。





本当は、ひじかぐやはうつむいて笑いを堪えていたのに。



それから数日が経ちました。

ある日、大鳥圭介がひじかぐやの部屋にやってきました。

本当はその日が取引の日では無かったのですが、どうしても会いたくなって来てしまったのです。

しかし、その日はひじかぐやは外出していたので、大鳥は、勝手にひじかぐやの部屋に入ってしまいました。

そして机の上に、一冊のノートを発見します。

「ん?これはひじかぐやの…?」

好奇心旺盛な大鳥圭介は、いけないと思いつつもノートを開いてしまいました。

そして驚きます。


そこには

「榎本:易⇒うなじを見せれば一発」

「松平:普⇒3度に1度はこっちから誘う」

「大鳥:易⇒笑顔を見せれば万事解決」

「伊庭:難⇒秘密を知られているので慎重に。思い込ませることが重要」

などと、求愛者一覧の落とし方がメモってありました。

大鳥は頭が真っ白になりましたが、後ろからふいに視線を感じて恐る恐るふりかえりました。

そこには、薄い着流しを纏っただけのひじかぐやが立っていました。



「…見てしまったのですね、私の秘密を」

「・・・・・・・」

大鳥はごくん、とつばを飲みました。



「貴方はいけない人だ。口封じが…必要ですね」

ひじかぐやは、怪しく微笑みました。



次の日の朝、伊庭はふらふらになって帰っていく大鳥を目撃しました。

ひじかぐやが何をしたのかは・・・秘密です。



それから数ヶ月が経ちました。

ひじかぐやは、そろそろ地球の男に飽きてきたので、月に戻ることにしました。

その話を、求愛者一同にそれぞれ話しました。

伊庭は

「月でもどこまででも付いて行きたいけど・・・」

と言いましたが、ひじかぐやは

「お前は一緒に連れて行けない・・・こっちの世界で幸せになれ・・・」

と泣きながら言いました。

悲恋!です。

翌日、彼の部屋から目薬が発見されましたが。


松平は

「月?それは遠すぎる。さようなら。」

と何の未練も感じさせずに別れの言葉を述べました。

爽やかな笑顔で。

ひじかぐやは

「サ・ヨ・ウ・ナ・ラ!」と顔を引き攣らせながら返しました。

生まれて初めて、「負けた」と感じました。

島田は、顔をずぐずぐにしながら「姫、姫…」と泣き続けました。

ひじかぐやは、優しく「後のことは頼んだぜ」と肩を抱きます。

後のこと⇒(野郎どもから起こされる裁判沙汰とか諸々の事後処理ヨロシク☆)



そして旅立ちの日が来ました。

「みんな、さようなら。」

というひじかぐやの腕(かいな)には、なぜかがっしりと確保された大鳥卿が。

鳥「うおぉい!私は行かない!月なんかに行きたくない!」

かぐや「おほほほ、何をゴチャゴチャ申しておられる。」

鳥「嫌だ!大気圏突破できるわけないじゃないかこんな駕籠で!」

かぐや「なせばなる、なさねばならぬ、なにごとも。」

鳥「気合か!気合で突破するんか!月って空気ないだろ!死ぬよ!」

かぐや「ゴチャゴチャ言ってんじゃねえよ、月の世界もいいもんだぜ。」

鳥「だだ、誰か!ちょ、あれ?みんなは?何??何撤収初めてんの!?」

かぐや「よし、俺たちも撤退すっぞー!」

相馬(←月から迎えに来た)「はい。」(笑顔)

鳥「ごわぁぁぁあああああああ浮いた!!死ぬ!!!ぎゃゃあああ」





今夜も月は、綺麗です。



おしまい。




☆★☆★☆★☆★
あとがき

えへえへえへ。
土方さん真っ黒です。
身も心も汚れています。これでこそ女王です。

あ、間違えた姫か。

今回のネタは、私が突発的に作ったものを秋杜さんにおしつけたところ、素敵すぎる続きをいただけたのであります。(「それから数ヶ月たった」ところからです)
くろみつ、一生分の幸せを感じました。うふふ。
というわけで、そのネタを使わせていただきつつ、小説風にアレンジしてみましたのでありますどうも。

いかかでしょうか??
こちらにいる皆さんは自己責任でご覧になったんですから平気。。。ですよね??笑

こんな小話を一緒に考えて下さる方、お話に付き合って下さる同志の皆さんを募集しております。切実に。
だれか寂しい私と絡んでくださーーーーい!!!!

では!!皆様また表の世界でお会いいたしましょう♪♪

そして最後に。
秋杜さーーーーん!!!!!!!ありがとうございました!!愛してます!!!

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