頂き物小説

土方さんはパンツ?<左巻様より>
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「歳さーん、居るかえー」 歳三の部屋に訪れた伊庭。

「なんだよ、伊庭かよ」

 振り向いて、椅子から立ち上がる歳三。

「つか、入る前にノック……あ、わっ、あー!」

 ドカッッ☆

 伊庭は駆け寄ってくるなり、歳三の腰に縋り付いて、ズボンのボタンを、器用に片手だけで外そうとしてきた……!

 突拍子もない行動に慌てた歳三は、思わず伊庭を蹴り飛ばしてしていた。

「いてぇよ、歳さんー」

 壁にしたたかに打ち付けた後頭部を摩りながら、片手だけの彼は、余程痛いのか頭を撫でる腕を離さないで、体だけでしなやかに起き上がる。

可哀相に頭の痛みに涙ぐんでいる……。

「て、てめえ、な、何すんだよっっ」

 こっちだって、泣きたい気分だ。何の前触れもなく、友達だと思っていた伊庭に脱がされ掛けたんだ。

歳三は、白い顔を真っ赤にしながら、外されかけたボタンを留めている。

「お、俺ァ、そんな気はねェぞっっ!」

「あー痛ェ…。オイラにもそんな気はないさね。いくら歳さんを好きでもねぇ〜?」

「じゃっ、じゃあ、何だっていきなりっっ……」

「だからァ〜……」

 言いながら、再び伊庭は歳三のズボンに手を伸ばした……が。

「……と、歳さん……お、落ち着…い……て」

 歳三の抜き身の兼定が、伊庭の鼻先に突き付けられている……。

「伊庭……。それ以上近付いてみろ。いくらおまえとは言え、許さねェぞ」

 歳三は、ギラリと眼を光らせ、兼定を構えたまま、伊庭を見据えている……。

「だ、だからァ〜、歳さ〜ん、落ち着いて〜。オイラ、何も歳さんに斬られに来たわけじゃねェんだぜ」

 伊庭は必死に宥めるが、歳三は兼定を降ろさない……。

「釜さんと太郎さんがさァ〜……」

「? 榎本さんと、太郎さん……?」

 歳三は刀を降ろした。

 うんうん、と伊庭は、勢いよく頷く。

「で、なんなんだよ?一体」

 兼定を収めながら、先を促す。

「あのさァ〜。先刻、榎本さんの部屋で、下帯の話になってさァ〜」

「はっっ!? 下帯っっ!?」

 歳三の猫のような釣り目が、驚いたように瞠った。

「オイラはまだ着物だけど、五稜郭のお偉方は皆さん、洋服じゃねぇか。でさァ、洋服にしたら、下帯も西洋のモノに変えるのかねぇ、って思ってさァ」

「……それで?…」

「榎本さんに聞いたら、脱いでみせてくれてさァ」

「………」

(何やってんだよ?あのヒゲ……。伊庭に下帯見せてる暇あるんならよ、兵量と武器の調達、なんとかしろよ)

 歳三は、あきれて何も言えない。

「そしたら、だよ? 釜さんは、『ずろーす』って言うの? ズボンを短く詰めて、クシャクシャっとさせた、なんか提灯みてぇの履いててさァ〜。バカウケさね〜」

伊庭は、思い出して腹を抱えて笑い転げている……。

歳三は、その光景を思い浮かべて、あまりの情けなさ、くだらなさに、「ハァ〜……」と嘆息した……。

伊庭は、ゲラゲラと笑いながら、続けている。 「一緒に居た太郎さんも、『私のも見るかい?』って脱いで、同じ『ずろーす』っての見せてくれて……」

 ひぃひぃ、と込み上げる笑いに苦しそうに呼吸を繰り返す。

「………」

 歳三は、何も言う気も、睨み付ける気も失せ、椅子に腰を下ろし、頭を抱えた……。

「大鳥さんも居たんだけどよ、あのヒト、へんにマジメだから、怒ちまっててさァ。オイラが『見せておくれよ』って、ズボンに手を掛けようとしたら、『ふざけるな!』って逃げちまったよ」

「ったりめェだっっ!」

 いまにも笑い死にしそうな伊庭を怒鳴り付けたが、もちろん伊庭は動じない。

(ったく…。大鳥の野郎まで、ヒゲどもと一緒にズボン脱いで見せ合ってたっつったら、俺ァ、三人まとめて雪の中に埋めて、氷漬けにしてやる……)

「でさァ、歳さんは何穿いてるか気になってさァ……」

「誰が教えるかよっっ!」

 歳三は遮って、言下に斬り捨てた。

「えー? そんな事言わないで、見せておくれよー。減るもんじゃなし〜」

「んなもん、わざわざヒトに見せるもんじゃねェやっっ」

「歳さんのなら、皆見たいと思ってるさね〜」

「余計なお世話だっっ」

「連れないじゃないさ。オイラと歳さんの仲じゃねェいか……」

真っ赤な顔で怒鳴る歳三の耳の後ろで、伊庭が囁くと、「ぅっっ……」と、歳三は声を洩らし、白い肌はさらに真っ赤になっていく……。カチンコチンに固まって、ビクともしない……。

伊庭は、ニヤと口端を歪め、

「なァ、歳さん……」と、吐息交じりに名を呼びながら、背後からズボンのボタンに手を掛け……

ようとしたところで、運悪く、歳三が正気に戻ってしまった……。

「……伊庭……テメェ……」

 歳三の目が、真横にある伊庭の顔を睨み付けている……。

「どうしたんだい?歳さん?」

 伊庭は、童のように屈託のない笑顔で見返したが、歳三の目は少しも変わらない……。

いつもなら、伊庭が笑顔を向ければ、歳三は必ずといっていいほど、照れたように顔を赤くし、乙女のように気恥ずかしげに視線をさ迷わせるのだが……。

今日は本気で怒り心頭に達しているらしい……。

「歳さん、顔が恐いぜ? 此処は京じゃ……」

 伊庭は、引き攣りそうな頬を抑えながら、笑顔で取り繕おうとするが……、

「……せ」

「へっ……」

「……いいから、離せっつってんだよっっ」

歳三の眉間に刻まれた皺が、さらに深くなるのを見、伊庭は、そーっと歳三から離れ、一歩一歩退がりながら、

「と、歳さ…ん……? こ、これだけで怒らないでおくれよーーーーっっ」

言い終わるやないやで、歳三の部屋から逃げ出した。

「伊庭ァー! この野郎ォー! 待ちやがれェェーーーーー」

般若の如くの形相で歳三は、長い髷と縛った片袖を靡かせながら逃げる伊庭を追い掛ける。

廊下を行き来する者たちはことごとく、「なんだ?なんだ?」「何事だっっ!?」と振り返る。

「歳さーん、ほんの冗談なんだからさァ、怒らない怒らない」

「冗談で済むかァ〜〜〜〜〜っっっっっっ」



この後、歳三は伊庭を見事に追い詰め、捕まえたわけだが……。

伊庭は、大好きな歳三のズボンの下を拝めたのか――。それはまたの機会に……。



おわり☆



☆★☆★☆★☆★

ちょ、ちょちょちょちょっと!!!!
聞きました!?奥さん。(興奮)
伊庭が、耳の後ろでささやいちゃってますよ!!!!
なんだこれ。
殺す気ですか私を。。。。(どきどき)
なんで私がどきどきしてんだ・・・(でもどきどき)

あーもう本当嬉しいです。大好きです左巻さま。
受け取ってください私の愛!!らぶ!!!!!!

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