1/8ページ目 それは、凍えるように寒い日の夕刻であった。 「土方さん…約束を果たしに来ました。」 襖越しに聞こえる沖田の声は低く、まるで機械音のように感情が読み取れなかった。 「貴方に…、貴方に殺していただきにあがりました。」 <夜明け前> T 事 雪が降っていた。辺り一面が、真っ白な雪化粧に覆われていたのをよく覚えている。 その白の上に、沖田は真っ赤な血を吐いた。 土方の前では初めての事だった。やってしまった、と何より先に思った。 ごほっ、ごほっと呼吸を整えながら、沖田は今ふり向くべきか、それとも土方の言葉を待つべきか迷ったが、 相手が言葉を発する気配も無いため、ゆっくり身体を起こしながら土方のほうを見る。 「_____________っ」 お互いがお互いの顔に驚いたことだろう。 土方は沖田の顔色の悪さに、沖田は土方の顔の凍りつき方に。 そのままどのくらいの時が流れたのか。 おそらくは2、3秒のことであろうが、2人には何十倍にも長く感じた。 と、沖田は自身の身体を支えきれず、前のめりに倒れかかった。 「総司っ!!」 たった今、呼吸をする、という行為を思い出したかのように短く言葉を発した土方は、慌てた様子で庭へ飛び出し、 自分よりもたくましく大きな身体を支えた。 「お前…」 沖田の口と手は赤く染まっていた。 人を斬ってきた後のようだった。 沖田は身体を支えられながら、自分より、この目の前の男のことが心配だった。 土方の手は震えていた。 その手を押しのけるようにして言う。 「大丈夫です。部屋に戻って下さい。」 「何を__っ」 「ははは、あんた裸足じゃないか。」 軽口を叩いてみたつもりだったが、思った以上に声がかすれ、土方には逆効果でしかなかったようだ。 一刻も早くこの場から去りたいと思った。 いや、一刻も早く去らねばならないと思った。 「ごめん、土方さん」 沖田は顔を上げずに、支えられていた手を押しやって、ふらふらと部屋へ戻った。 土方は動かなかった。 声を発する事もなかった。 顔は見なかったが、おそらく自分よりも血の気が引いているんじゃなかろうか、と思うと、 なんだかすこし笑いたくなった。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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