1/1ページ目 白の剣 久しぶりの外出だった。 伊庭とこうして二人で会うのは勿論、誰かと仕事以外で会う事すら最近はめっきり減ってきた。 外は毎日の雪によって真っ白に染まっている。 「少し外に出てみないかえ?」 そう言って半ば強引に連れ出されたが、やはり寒い。 ぶつぶつと文句を言いながらも、結局は付いてくるのだ。それを意地悪くも伊庭は承知しているからやっかいである。 数歩先を嬉しそうに歩く後ろ姿が実年齢よりいくらか幼く見せていて。 時々振り返っては、少し不機嫌そうに歩く自分の姿を確認して笑う。 何が可笑しいんだ、と文句の一つもたれてやりたくなるのだが、あまりの寒さに口を開くのも面倒だった。 しばらくして、まだ誰も足を踏み入れていない空き地を発見すると、伊庭はこっちへ向かって大きく手招きをした。 「歳さん!!見ておくれよ。真っ白だ」 土方が自分の隣へ来るまでの数秒すら惜しいというように、伊庭は自ら土方の方へ戻り腕を引く。 「…今さら雪の何が珍しいんだよ」 口を開くと冷たい空気が身体中に入り込んでくるようだ。 「いいから見ておくれよ。こんな一面まっしろで静かな場所は珍しいんじゃねぇかい?」 そこは、本当に何も無かった。 土の上に平らに雪が積もっていったのででこぼこすら無い。 視界の端のほうに数本の木が、重い雪を懸命に支えながら立っているが、この真っ白な空間を邪魔するには至っていなくて。 まるで「聖域」だ。 「綺麗だろう?ここを知ってる人は何人いるんだろうねぇ?」 おいら達が第一発見者かもな、と笑う。 つられて少し笑った。 「……ああ、綺麗だな」 「ここもいつか、戦場になっちまうのかなぁ」 ぽつりと、隣の男が呟いた。 小さな声なのに、静かすぎるこの場所ではよく響いた。 「……なぁ、歳さん」 「ん?」 「ここはこんなに綺麗なのにさ…おいら達はどうしてこんな場所に来て戦争なんか…どうして…」 「伊庭、やめとけ」 「____ん」 怖かったんだ。 これ以上続けたら、この空間に自分たちの存在を否定されそうだった。 ここまで走った事を、後悔してしまいそうだった。 汚れた自分達は、この場所にいてもいいのだろうか? この汚れを、現在生きる理由としているのに。 「歳さんは綺麗だよ」 見透かしたかのように伊庭が微笑んだ。 土方の眉間に皺がよるのを見て、ここ、と自分の額を指さす。 「伊庭、俺は汚れてるさ。目的の為なら何だってした。自分で決めたことだ、どんなに汚れても構わねぇってな」 「でも、おいらは歳さんほど心の綺麗な人を見たことがないねぇ」 「___」 思わず右に振り向いたら、にやにや笑う伊庭と目が合って、あわててそらした。 「……早く春になるといいね」 「あぁ」 「いつか……憎しみあわなくていい時代がくるかなぁ」 「来ると…いいな」 「………ここは、足跡付けないで帰ろっか」 「………あぁ」 帰り道は、二人並んで歩いた。 ★☆★☆★☆★ テーマソングは冬ソナのアレで。笑 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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